岐阜県建築士会 まちづくり委員会

公益社団法人岐阜県建築士会 まちづくり委員会
岐阜県建築士会公式HPはこちら

ぎふHM 2025年度

HOMEぎふHM 2025年度原皮師(もとかわし)作業見学会

原皮師(もとかわし)作業見学会

日時:令和7年10月11日(土)10:00~12:00

場所:富士山東光寺 岐阜県山県市小倉641841

 

918a3f360a428b64bed4545165d44695ff6dafca.jpg 5d11b8e26c103eaac3dbeb6ccaf739d494db2011.JPG

    見学会チラシ         東光寺本堂 山県市指定文化財

 

 霧雨の中東光寺境内へユネスコ無形文化遺産に登録された「檜皮葺」の材料となる檜皮を採取する原皮師(もとかわし)の作業を見学できるということで行ってきました。先に境内を見たいと思い、集合時間より45分早く現地を訪れました。本堂は見事な檜皮葺でした。他にも何棟かありましたが、瓦屋根と檜皮葺の建物が混在していました。

 

KIMG20251011_093431137.JPG KIMG20251011_095859105.JPG

      流れ造りの檜皮葺き           東光寺ご住職と原皮師の須賀氏

 

 最初に住職のお話を聞いて、境内自体も広かったですが、山林もお寺の所有ということで、今回はこの山林の一部で作業を見せて頂けるとのことでした。昨年度は高校生向けに行ない、今年度は一般向けに見学会を計画したそうです。

 続いて原皮師の須賀氏に境内で檜皮葺について説明して頂きました。檜皮葺に使用する檜皮は2尺5寸(750㎜)が基準で葺いていくそうでう。先の写真にある本堂はこの2尺5寸を用いていますが、流れ造りの檜皮葺のように小さなお堂では2尺5寸では長すぎるため短いものが使われているそうですが、2尺5寸でおよそ30年、それ以下になると20年と耐用年数が減っていくそうです。

 そういった説明を聞きつつ山の中へ移動しました。まだ姿は見えないところからパチンパチンと皮を採取する音が響いていました。

 

KIMG20251011_101519299.JPG KIMG20251011_101640236.JPG

  檜皮が採取されて檜肌が見えている        ヘラで檜皮を剥いでいく

 

KIMG20251011_101951513.JPG KIMG20251011_101709123.JPG

  2尺5寸の四倍の3mまで順番にはぐ       3mに到達し、なたで切った後

 

 檜肌が見えている写真の一番手前の木はまだ1回も檜皮を採取されていない木となり、初めての檜皮が一番良いものだと思っていたが、一度採取されたもののほうが良い檜皮が採取できるそうです。4名の原皮師がいましたが、皆さん1度採取された木を選んでいました。また、須賀氏によると10回くらい採取された木もあるそうです。10年に1度となると100年という長い時間採取できることが分かりますが、次に行くと伐採されていることの方が残念ながら多いそうです。

 皮をはぐ道具はヘラと言い、須賀氏によるとこのヘラはどんなものでも剥ぐことができるが、カナメの木が一番適していて、檜肌を傷つけずに採取できるそうです。後で触らせて頂きましたが、硬いのに滑らかな感触でした。

 3mまで剥いでいき、なたで切るそうですが、厳密に3mを測定しているわけではなく、弟子になった時に3mの長さを感覚的に覚えることを最初にするそうです。

 このような作業を見ながら質問にどんどん答えて頂けるので、分かりやすくとても勉強になりました。原皮師の作業はここまで(11時くらいまで)でしたが、時間がある方は「コヅク」作業も見せてもらえるということで場所を移動しました。

 

KIMG20251011_114807649.JPG KIMG20251011_112801259.JPG

   1分の厚みを更に薄くする作業             コヅク作業

 

 採取した皮を乾かしてそのまま使用するかと思っていましたが、だいたい1枚1部(3㎜)の厚みで採取でき(厚いと5㎜くらい)それを更に薄くして1㎜程度の材で檜皮は葺かれているそうです。

 薄くした時に細長くなりますが、それをコヅク作業を経て長さ750㎜×小口150㎜×ケツ130㎜くらいで1枚の葺き材(薄くする作業の写真の板の大きさ)となります。それを写真左側のように束ねて乾かすそうです。重さは30キロにもなるそうです。コヅク作業は刃物先で叩くだけですが、それだけできれいにくっついていくのは見事でした。コヅクの漢字はの質問もありましたが、口伝えで字は分からないというところが職人の世界だなと実感しました。

 また、原皮師のは普段この作業はしないそうですが、木が成長する時期には皮が採取できない時や大雨が降って作業出来ない時に行なうそうです。手際がよくてどんだけ見ていても飽きないくらいで、気付いたら12時を過ぎていました。

 こんな貴重な見学をさせて頂いた東光寺の方々、現在山梨で仕事中なので、わざわざ岐阜まで来て作業を披露してくらた原皮師の方々、説明をして頂いた須賀氏には改めてお礼を言いたいです。

 来年度も計画して頂けるということなので、楽しみにしています。