岐阜県建築士会 まちづくり委員会

公益社団法人岐阜県建築士会 まちづくり委員会
岐阜県建築士会公式HPはこちら

ぎふHM 2022年度

HOMEぎふHM 2022年度HM 第4日目

HM 第4日目

テーマ:国有形文化財 岐阜公園三重塔について、懸垂式心柱や搭の構造などを学ぶ(講義・演習)

    申請の業務「文化財建造物の申請について学ぶ」(講義)

日時 :令和4年6月25日(土)12:00~17:10

場所 :講義   岐阜市歴史博物館 講堂

   :実地研修 岐阜公園三重塔

参加者:33名

 

会場:岐阜市歴史博物館            石黒会長挨拶の様子

image1.jpeg  d835347e93056e97d6848744fc8f8d4da5ff5aa2.jpeg

 

岐阜公園三重塔「搭の構造」(講義)

 有限会社伊藤平左エ門建築事務所 名古屋事務所所長 望月義伸氏に講義して頂きました。

 講義が始まる前に岐阜市が委託して作成された三重塔のDVDを15分ぐらい放映されました。

 講義の前半は、建物の構造の歴史から作図や写真などを拝見しながらの講義になり、建物構造の始まりは、柱などなく構造材を斜めにたてかけて三角の構造から成り立ち、次第に掘立柱を中心に建てた建物の構造となり、周りに柱を建てるようになっていったのが建物の基本となったそうです。

 構法では通柱に貫を指す構法が唐から伝わってきて現在の構法の基本となり、現在では残念なことに余り貫が使われなくなり胴差に金物で引っ張る構法が支流になってきているそうで、構造の歴史から学べてとても勉強になりました。

 搭構法の種類は、積重構法、長柱構法、櫓構法があり岐阜の三重塔は櫓構法になっているそうで、櫓構法は上の重みで下の建物を押さえる工法になっているため、相輪は飾りだと思っていましたが、飾りだけではなく下の建物の錘になっている為、あれだけの長さ(重さ)が必要なのだと分かりました。また、櫓構法は少しの風でも心柱が動く構法になっているのだと分かりました。

 後半の講義は、岐阜公園三重塔の意匠、構造、材料の改修法についての講義でした。

 構造改修と構造性能評価は、構造形式の振動実験、改修前の三重塔の振動特性実験、終局強度算定、地震動時刻歴応答解析(告示派と兵庫県南部地震波)、樹種の同定、木材の材料試験をおこない、実際の振動特性は建物の振動実験結果を参考にして、軸部や桝組の特性を明らかにし、経年変化を受けた改修前の構造調査によって、補強材の挿入、新材への取替えなどの対策をおこない、文化財建造物としての従来の構造を可能な限り残した改修をしたそうです。基礎をアンカーボルトで固定したり、めり込み防止の為に鋼製プレートを大斗下に敷くなど金物による補強も必要なのだと分かりました。

 

望月義伸氏紹介風景              望月義伸氏講義風景

image3.jpeg  image4.jpeg

 

岐阜公園三重塔見学(実地研修)

 岐阜公園歴史博物館から徒歩5分ほどの所に三重塔があり、そちらを研修しました。通常建物内までは見学できないらしく通行不可の柵がしてありましたが、岐阜市役所の協力で建物の内まで見学をさせて頂きました。心柱が吊って浮いている1階部分しか見学することは出来ませんでしたが、心柱が浮いている所や心柱と周りの隙間が空いている所などは確認する事が出来ました。三重塔内で望月氏の説明や質疑応答まで対応頂け、四天柱が調査の結果5色で塗られていたので、当初の色を再現させた5色に塗られている事、また黄色部分だけ汚れているが、改修当時は綺麗な黄色だったが、黄色部だけ虫が花粉と間違えて寄ってきて汚すのではないかと面白い話も聞けました。

 2階以上も上に登る事は出来るそうですが、梯子を掛けて登るらしく今回は登れませんでした。見学前の講義で聞いた下の建物を上の建物で抑えている所や、金物を使い心柱から隅柱などを繋げている所が見学出来なかったのが少し残念でした。

 

岐阜公園三重塔

image5.jpeg

 

岐阜公園三重塔見学風景       岐阜公園三重塔見学風景

333d2bbd775b90300d16022423c2465ff75420ff.jpeg  image7.jpeg

 

岐阜公園三重塔見学風景            三重塔内での講義風景の様子

image8.jpeg  fe92a1b84922e9de8f290d9fa3cff06f5056af5e.jpeg

 

登録有形文化財 申請の実務(講義)

 続いてあいちヘリテージマネージャー協議会 川口亜稀子理事に講義して頂きました。

 講師は意匠系の設計事務所をおこなっていましたが、登録申請業務をサポートする仕事を手伝ったことでヘリテージマネージャー養成講座を受講し調査などの仕事をされ、今ではヘリテージの登録手続きをするようになったそうです。あいちヘリテージ協議会がどの様に申請業務をおこなっているかなど話を伺えてとても勉強になりました。

 あいちヘリテージ協議会が携わった川田家住宅の説明から、登録手続きの具体的な申請と書類の流れ等をヘリテージマネージャーの立場から説明して頂きました。

 まずは見学会及び勉強会を開催し、建物所有者が登録有形文化財への意思があるか確認をおこない、意思があればあいちヘリテージ協議会が独自で作成された書類に基づき事前相談をおこない、所有者の意向確認と登録候補物件に該当するかなどの確認をおこなうそうです。

 次に所有者の同意を取り登録の実査に向けての準備や事前調査申込書の提出(調査費25,000円)、申請スケジュール・チェックリストを活用しながら事前調査をおこない、文化庁の実差を受ける。ここで正式に業務委託(業務委託300,000円)を交わし申請の手続きに入っていくそうですが、文化庁の指定された方法で書類を作成するので写真の撮り直しなどもあるそうなので、ひな形を見ながら写真や書類などを作成しないといけない事が分かりました。注意事項として登録に向けての同意書は全て所有者から頂かないといけないので、所有者の謄本を取寄せ、全ての所有者の確認をしないといけないそうです。あいちヘリテージ協議会でも未だにスケジュールの変更や金額設定はおこなっているそうで、実査段階(事前調査)でほぼ書類を揃える事になるので、金額の割合や諸経費なども考えていくと良いそうです。

 後半の講義では、登録後の実務の内容を講義頂きました。

 所有者や管理者が変わっても届け出を出さないといけないので、所有者に対して正確な情報を伝えたり、調べないといけないと感じました。文化財を守っていく思いを所有者に伝え、地域で文化財を守っていく事に意味があることを教えて頂き、自分も同じように伝えていきたいと思いました。

 文化財登録をして頂く為に、建物のいい所や価値のある所を所有者に伝え、何度もかよって説得する部分もあるそうで、仕事と言うよりはボランティア部分が多いと言われ納得しました。また、所見の評価が重要になってくるそうですが、簡素化させて文章をまとめる様に差し戻しがあったり、文字の難しい物や分かりにくい字にはルビを入れたり、数字の文字数によっては半角全角と使い分けたり所見の細かい指示があるそうで、図面などの書類をまとめるより所見をまとめる方が大変だと感じました。

 

川口亜稀子氏講義風景             講義会場の様子

image10.jpeg  image11.jpeg

 

次回のガイダンス

 7月23日(土)開催の岐阜市の説明会を行いました。

  第5回講座 日時  :令和4年7月23日(土)13:00~17:10

        集合場所:みんなも森 ぎふメディアコスモス(おどるスタジオ)