岐阜県建築士会 まちづくり委員会

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ぎふHM 2022年度

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HM 第5日目

テーマ:文化財建造物の防災・現在について及び災害時の対応について学ぶ(講義①)

    文化財建造物の耐震対策について補強・修繕の要点を学ぶ(講義に)

日時 :令和4年7月23日(土) 13:00~17:10

場所 :みんなの森 ぎふメディアコスモス(岐阜市立図書館内) おどるスタジオ

参加者:29名

 

石黒会長による第5日目開会あいさつの様子

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文化財建造物の防災・減殺について及び災害時の対応について学ぶ(講義①)

 岐阜大学準教授 村岡治道氏に講習して頂きました。

 これまでの災害から得られた教訓と取り組みについて学び、特にヘリテージのきっかけとなった阪神・淡路大震災後の各地での取り組みと課題についてお話をいただきました。文化財は社会や住民に欠かすことのできない基本的な公共財であることから、喪失することは地域機能の低下や地域の誇りを無くすことにもつながるため、指定文化財のみではなく未指定文化財も含めて修理や保存そして救出、保護に至るまでヘリテージマネージャーとして取り組みの意義を考えていく必要があるということです。

 文化財建造物の防災に関しては法的な扱いとして、国が定めている災害対策基本法の中に文化財に関する項目もあるため、国の防災基本計画・県の岐阜県地域防災計画に基づき予防や応急のみではなく、建築側の人間が見落としがちな復旧・復興に至るまでを含めた、守るだけではなく災害が起こった後も守っていくためにヘリテージマネージャーは必要な災害対策をおこなっていく必要があることを学びました。

 また、これらの法や計画書には、「減災」の定義がないことや、災害復旧についてはあまり詳しく書かれていないことから、防災をあきらめた甘い考えが減災であること、被害100→被害99となっても減災となることおよび、過去の裁判事例から想定外は言い訳でしかないという判決がされていることをふまえて減災や災害復旧についてどのようにするのかを今後、岐阜ヘリテージマネージャーとして考えていくべきことであると課題提起いただきました。

 休憩をはさみ講義の後半のパートにおいては、阪神・淡路大震災と熊本地震の被害調査と復旧の事例を学び、阪神・淡路大震災の教訓から発足した、ヘリテージマネージャー誕生後の熊本地震ではヘリテージマネージャーによる指定文化財か否かにかかわらずの調査・復旧に向けた助言支援・支援対象建造物の選定及び復旧方法についての提案といった活動事例などもお話しいただきました。ただ、今後の課題として災害発生時の初動の対応・人材の確保と育成といったヘリテージマネージャーに関することや、未指定歴史的建造物に対する支援制度といったことに対して岐阜では対応出来るようになっていくと望ましいとお話しいただきました。

 最後に、地震発生時の避難誘導として、「めがね」(目利き=災害発生時どのようなことが起きるのか平時においても見えること)の映像によるトレーニングをおこないました。地震発生時から5秒後に本棚が倒れて下敷きとなり死ぬ。6秒で建物が倒れて倒壊に巻き込まれ死ぬ。ということから、地震発生から数秒で生死が決まることを念頭に、文化財や建造物を守ると同時に見学に来ている観光客や利用者の命や身体を守ることもヘリテージマネージャーは考えるべきであるということを学びました。特に耐震性の低い文化財において、どのように耐震性を考えるのかそして所有者に対しては災害時このようなことが起きるため、このような誘導をしてくださいという提案までもおこなう必要があり、場合によっては文化財であっても建物内に鉄骨でシェルターのようなものを配置するということもあり得るかもしれないということでした。

 

村岡治道氏講習風景             ディスカッションの様子

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文化財建造物の耐震対策について補強・修繕の要点を学ぶ(講義②)

 続いて岐阜県森林文化アカデミー教授 小原勝彦氏に講習して頂きました。

 パート1として耐震診断方法は、重要文化財の基礎診断内容としては、重要文化財(建造物)耐震診断指針 平成11年4月8日 庁保建第19号 文化庁文化財保護部長通知に基づき、「機能維持水準」「安全確保水準」「復旧可能水準」これら3つの評価基準のうち、どれを満たすようにするのか選定して評価をすると学びました。

 パート2として現状の耐震性能調査は、木造建築病理学でおこなっている詳細調査を参考に調査要点などを実際の写真を見ながら確認していきました。一般的な木造建築と同様に梁上耐力壁は耐力壁の低減が50~70%となるため過大評価しないとこや、横架材の下側(引張側)に欠き込みや腐朽があると大幅な曲げ低減となるため見逃さないことが大切であるということでした。また床の傾斜は発生原因を追究して原因から直していなかいと修繕してもまた傾斜が発生するため気を付ける必要があることや、特に重要伝統的建造物は非常に重い屋根であることが多いので、柱の有効細長比がNGとなることが多いので注意する必要があることも学びました。そして常時微動測定の結果から推定できる限界耐力計算の弾性剛性や最大耐力、変形、固有振動係数など一見、無関係と思われるようなものでも数々の物件をグラフで集計していくと相関性が見えてくることも学びました。

 パート3として耐震補強計画と事例を耐震補強要素とともに8事例見ていきました。中には育成講座3日目に実地研修をした美濃和紙あかりアート館の事例もあり、実地研修では隠蔽部で見ることのできなかった補強の状況を写真で確認することもできました。また、耐震補強計画については耐震補強の評価目標をどこに設定するのかを所有者の考えや補助金の耐震基準値などをふまえ、物件ごとに所有者や行政と打合せをしながら、建築物にかかる力の流れをコントロールした耐震補強計画の立案をしていく必要があることを学びました。

 パート4として耐震補強の効果検証を6事例を見ていきました。常時微動測定による耐震補強前と耐震補強後の変化を数値としてグラフで確認し耐震改修をおこなうことにより、固有振動数0.9~4.2Hzの上昇を見ていきました。また、耐震改修と同時に温熱環境改修をおこなった事例についても紹介いただきました。

 そして今後の課題として、現状は調査が先になるケースが多いが耐震改修の構造ルートや耐震改修性能の設定の違いにより、それぞれ見るべき調査部分や耐震補強の範囲が異なってくるため、これらは調査する前に決めておきたいことや、対策をおこなった後の効果測定を所有者にも実感できる機会を作っていくことを考えてほしいとお話しいただき、最後に質疑応答をおこない終了しました。

 

小原勝彦氏講習風景             ディスカッションの様子

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次回のガイダンス

 8月20日(土)開催 (ワークプラザ岐阜にて)の説明を行いました。