岐阜県建築士会 まちづくり委員会

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ぎふHM 2022年度

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HM第11日目

テーマ:郡上市の伝建地区について(講義・実施研修)

日時 :令和4年11月5日(土)10:00~15:00

場所 :午前講義   郡上八幡まちまみ交流館 研修室

    午後実地研修 郡上八幡北町伝統的建築物保存地区(柳町~職人町~鍛冶屋町~大手町)

参加者:28名

 

次回のガイダンス

 11月19日(土)開催の岐阜市の説明を行ないました。

 

伝建修理・修景事業における設計監理業務について その1(講義)

 郡上八幡教育委員会社会教育課 文化係長 齊藤千恵子氏に講義して頂きました。

 郡上市の景観行政は、当初、都市計画担当部門が国土交通省のメニュー(補助制度等)を活用して整備を行ってきたが、文化庁のメニューの活用も図るため、伝建地区の指定を行うこととした。

 これにより、今までの「地域のまちなみ」から「国としての重要なまちなみ」へと位置付けられるとともに、補助事業における補助率のアップ等も図られた。保存地区内では令和4年5月に電線地中化が完了したところ。

 伝建地区内でのまちなみの保存の推進のためには、建築物の修理や修景の意匠設計や内訳書の作成など技術的分野において、特に建築士の力が求められている。

 旧八幡町の市街地は近世に城下町として発展し、川と山に囲まれた町である。敷地の間口は2間半から3間が多く、隣地と合筆する仕込み屋、敷地を分割する割屋が行われながら、まちなみが形成されてきた、明治になり武家地が公共施設に替わり、旧八幡町の中心地として栄えた。大正8年の北町大火で北町のほとんどを消失してしまったが、その復興として道路の拡幅、防火水槽の整備、住宅の建設、屋根の不燃化等が行われ、早期復興を果たし、北町には大正末期から昭和初期に建てられた町屋が多く残っている。

 平成24年12月に国から重要伝統的建造物保存地区として、城跡、旧武家地、旧商人地が選定された。選定に至るまでには、「水のまち郡上八幡」「町並み保存会」「景観」都市計画(中心部の都市計画道路の廃止、住居系の建蔽率の緩和)の見直しなど、様々なまちづくりを進めてきた。地区選定以後は、伝建地区だからということを地域、国県に対する説明根拠とし、地区の内外で補助対象、仕様等の明らかな差をつけているとのことでした。

 

齋藤千恵子氏講義風景

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伝建修理・修景事業における設計監理業務について その2(講義)

 引続き齋藤千恵子氏に抗議して頂きました。

 伝建地区の選定に合わせて、伝建かわら版というものを発行し、伝建地区内には全戸配布、地区外は希望者に配布している。各号の内容は次のとおり。

(1)かわら版第1号(選定前の町内会への説明会用資料)

 保存地区の範囲と特徴、伝統的建造物の種類と特徴、保存対象となる伝統的建造物と環境物件、伝建制度で行う町並み保存修理、修景基準・許可基準(案)、保存地区内の環境整備の方針、助成措置等の実施と検討、今後の選定までのスケジュール等選定案の内容が説明されている。

   かわら版第2号(説明会での質疑への回答)

 建築基準(修理基準、修景基準、許可基準)が適用される範囲、特定建造物の同意、伝建制度の補助、修理や修景の工事、防災対策・無電柱化・耐震補強などについて回答している。設計費、管理費は100%補助となること、耐震性の向上も検討すべきであるなど明記されている。補助事業であるため前年度の設計や工事費の見積などスケジュールに留意してほしいとのこと。

(2)かわら版第6号(選定後の補助制度の説明)

 補助金による修理・修景工事、補助金の申し込みと事業の流れ、現状変更申請書について説明している。改修であることから、現場の状況による変更が前提であり、そのたびに文化庁などへの相談が必要となる。

(3)かわら版第11号、第16号(補助事業実施物件の紹介)

 修理修景事業の内容を報告している。当初の物件は事業の立ち上がりということから、確実な案件でかつ緊急性の高いものを選んだとのこと。町外の所有者が多く、住民が少ない地区(鍛治屋町)が補助事業に対して積極的であり、それが他の地区へも波及していった。

 

 保存調査のバイブルとして図書の紹介があった。※「民家のみかた、調べ方」絶版

 現状がトタン張りの外壁を板張りに戻すつもりであったが、建設当初からトタン張りであったことが判明したためトタン張りとした事例など修理において、元の仕様に戻すことは良いが、変えることには抵抗があるとのことで、保存担当者の正直な気持ちが感じられた発言でした。

 

昼食のお弁当

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郡上八幡伝統的建造物保存地区(現地視察)

下柳町の屋敷型伝統建築物

 旧武家地に立っている屋敷型の住宅、石積みの上に建てられ、道路側には板塀と門が設けられている。屋敷型で残存しているのは2件のみとのこと。今後の活用が望まれます。

中柳町の町屋

 特に町屋がれんぞく連続して残っている地区です。段差を利用してシタヤを持つ三階建てです。電線地中化の効果も高く、伝統的なまちなみが感じられました。

上柳町の集合住宅

 大火の後の復興事業として建てられた集合住宅(乙種)が残っています。

長敬寺の防火用水

 用水の水を引き込み防火用水として貯めている。現在もその機能を有しながら、立派な鯉が泳いでいます。

職人町の町屋

 旧町人地として、突き当りにある寺と町屋の袖壁が連なり、近世らしいまちなみが広がっています。

鍛治屋町の町屋

 大正末期からしょう昭和初期の建物が多く、様々な軒高の建物が混在する町並みとなっています。高いほうの軒が隣地にはみ出すことが暗黙の了解となっているが、最近は同意しない方もいるらしい。

大手町の町屋

 江戸時代には大手門があり城へ向かう中心の通りでした。国登録有形文化財の旧堀谷医院が建っています。

 伝建地区の範囲は、道路の反対側の敷地を含むように指定し、まちなみの連続性を考慮しています。

 

「下柳町の屋敷型伝統建築物」での説明    「中柳町の町屋」の現在の様子

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「集合住宅」での現地視察の様子       「長敬寺の防火用水」

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職人町                   鍛治屋町

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大手町

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南町

 伝建地区外であるが、旧斎藤家、旧役場等古いものをまちづくりに活用した事例の説明を受けた。

 

旧八幡町役場                説明の様子

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 今回の講座で伝建地区の指定の考え方や経緯、さらには、現地にて改修した物件を前にした丁寧な説明により、大変勉強になりました。これからの保存改修計画に活かしていきたい。