岐阜県建築士会 ぎふ木造塾 部会

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2010年度

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第7回講義を終えて

望月 仁 先生(左)、村上 淳史 先生(右)

  本年度最後「ぎふ木造塾」の講座本当にご苦労さまでした。最後の講座としては時期的なこともあり、出席者が少な目だったのは残念でした。

 

  講師は村上敦史氏・望月仁氏により進められ、持ってきていただいた架講設計モデルプランを使った実技演習課題をこなしながらの講座でした。

 

  「安全な構造の伏図の描き方」-株式会社エクスナレッジ 発行-を参照しながら・直下率とは何か?・構造ブロックの考え方を講義して頂きました。

 

  その後モデルプランを使用して壁直下率、柱直下率のチェック図を作成し電卓を使いながら壁直下率、柱直下率を算定しました。

 

  昨年もそうでしたが、自分自身で作業を行う事で架講設計時の力の流れを体感する事を感じました。又、実際に問題が生じた事故事例を参考に、その原因と対応をお聞きしました。

 

  時間が無く、十分な説明を受けることができなかったのは残念でした。塾生の皆さんも参考にいただいた直下率調査票を大いに活用して下さい。

 

知らないうちに危険な家を設計しないよう十分心がけたいと思わされた講座でした。

 


<受講生の感想>

 


○実際に手を動かしての作業なので理解しやすかったです。模擬検定やってみたかったです。来年の木造塾で是非お願いします。

 

○昨年に引き続き講義を受けました。今回はチェック図の作成から対策の検討までやってみて、より理解が進みました。時間があればもっと演習をやりたいです。

 

○今までは間仕切壁直下率及び柱直下率は感覚的に行ってきただけでしたが、本講習では計算の仕方そして問題が起きた時の対策の方法などが良く分かりました。

 

○いつもCADに任せていた事が実際手で出来る方法が分かってよかった。説明も分かりやすくてよく分かった。もっとグレードの高い話を聞きたい。いろいろな棟梁の話を聞きたい。
 

 

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現地見学会 特別企画 E-ディフェンス(兵庫耐震工学研究センター)

平成22年11月4日(木)晴れ  参加者33名


今回は、兵庫耐震工学研究所センター(Eディフェンス)において木造学校校舎振動台実験の見学、兵庫県小野市の極楽山 浄土寺 浄土堂(国宝)の見学を行いました。

 

午前8時じゅうろくプラザ前を出発し、森林アカデミーからお借りした耐震についての数本のビデオを見ながら車中をすごしました。時間の都合で名神多賀SAにて 昼食の速弁をバスに積み込み窮屈でしたが、車中にてお弁当をたべました。

 

12時20分頃、兵庫耐震工学研究所センターに到着。受付をしてから 敷地内の見学をしました。
13時45分 事前説明(実験場内)
14時00分 実験開始


今回の実験は、兵庫県高砂市立宝殿中学校の木造2階建て校舎(昭和38年築)を分解して、
E-ディフェンスへ運搬し 補強無しと有りの2棟の試験体に分けて構築したそうです。
今回は、そのうちの1棟の補強しない(無補強試験体)に、人工地震波(震度6弱)を用いて 水平1方向加振する公開実験でした。

 
建物が大きく揺れているのを目の前で数秒観察、あっという間に終わりました。短時間でしたが、実際目で見ないとわかりません!見学して大変よかったと思います。

 

 

浄土寺の国宝 浄土堂は、奈良の東大寺南大門と並んで天竺様建築を代表する建物です。
西暦1192年に創建され昭和32年まで約770年間一度も解体されなかったそうです。

 
昭和32年3月より2年半の解体修理工事が行われたそうです。一番の特徴は、お堂の背面の透かし蔀戸から差し込む西日が化粧屋根裏に反射して阿弥陀三尊を浮かび上がらせる建築的表現です。特に8月の西日が良いそうです。

 

今回は、いつもの会場を飛び出しバスでの見学で 大いに親睦を深めたことと思います。天候にも恵まれ事故もなく見学会ができました。
 

↓こちらから、実験の様子が動画で見られます。(神戸新聞のHPで紹介されています) 

https://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/0003583731.shtml
 

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第5回講義を終えて

内藤先生の基調講演

 今回の木造塾は、「時代の要請にあった木造住宅のあり方とその可能性」というテーマのもと、初の試みとして、木造塾塾生の方々による、それぞれのお立場からの活躍事例を発表していただくいわば「塾生講師」というスタイルをとった。そしてその発表に先立つ基調講演として、中部大学の内藤教授をお招きした。

 

 そして最後の50分ほどを、塾生の方々も交えた意見交換会という形で進めた。初の試みであり、スムーズにいくか心配だったが何とか満足のいく内容となったのではないかと安堵している。


 内藤先生は、岐阜に所縁があり東濃地域を調査対象として在来工法の住宅建築の歴史を調査研究されたこともある。明治以降の全国と東濃地域における建築歴史の流れを、詳しく話していただけ、現在の在来工法がどのように出てきたかを理解することができた。

 

 先生の言葉を借りれば、伝統工法なんていうのは幻であり、ただ時代にあわせて作られてきただけだということであった。この話をお聞きして、今現在、我々が向き合っている在来工法の立ち位置とでも言おうかその位置づけが明確になったと思う。

 

 昔はこうじゃなかったとか、本当はこういう風にやるんだとか、今の工法を後ろめたく思う必要はなく、堂々とやればよいと言われた。時代とともにその要請にあって、変化してきて、今の工法があるのだからと。


 塾生講師の方からはパワーポイントを使って、自分の取組やこだわりを紹介してもらった。それぞれの方が第一人者として、ご活躍の方々で聴きごたえがあった。


 意見交換会では「時代の要請とは何か、日本の木を使うことなのか、大衆の求めているものとは何か」など、たくさんの意見や質問が出た。先生は現実生活の中でメンテナンス等も考えた住まいを考えていかなければいかず、観念論だけではダメだと言われた。

 

 提案した間取りとは違う使い方・生活をしているという実態もあり、これからの時代に要請されるものとは、「多様性」ではないかと括ってくれた。

 

<受講生の感想>

●経営優先で、時代の流れの中で仕事をして来たと思う。今日は、常日頃思っている素朴な思いをいろんな形で考え、体現しておられる話を聞けて、初心に帰れて、今一度自分なりに考えてみよう、という気持ちになりました。


●いろいろな人の意見が聞けておもしろかった。又、今回のような形式を取り入れて下さい。


●多様な住宅の方向の社会に対する考え方が聞けてよかったです。


●現在、言われている在来工法というものが、明治初期から大正時代にかけて成り立ってきたもので、歴史の浅いものであることを認識すると、在来工法という言葉にあまりこだわる必要もないと思われます。

 今後の木造建築の姿としては、未来思考はもとより、過去には江戸時代以前のものも取入れ、普遍的に考えることが必要ではないかと思われる。


●確かに伝統建築、在来工法は大工としてやりたいです!!このような時代ということもあり、需要もなく、技術を発揮する場所もありません。

 大工も、過去の栄光ばかりでなく、割り切ることが必要でしょうね。お施主様の望みを叶えて、幸せになっていただく、この思いで仕事をしていきたいと思います。


 

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第4回講義を終えて

講義の様子

  講師の辻 光孝氏は、兵庫県の出身で、設計事務所勤務を経て2001年の岐阜県立文化アカデミーの教員として、木造住宅の設計手法、性能評価の講義を受け持つ傍ら、木造建築プロジェクトとして木造住宅、公共木造の設計、又、ウッドマイルズ研究会監事、美濃道の駅実施設計専門部会委員、岐阜県産材ポ-タルサイト選考委員等の用職でご活躍してみえます。


 今回のご講義は、緑の自然に囲まれた大変環境の良い中での教室で行われ、受講生の皆様には、場所、時間共変更に成り心配しましたが、予定通り開始でき又、多くの方々に参加して頂き
感心度のたかさが伺えました。


 自立循環型住宅の考え、住宅エネルギー性能の計算方法、入居後の光熱費をどのように削減するかで・・・・地球の自然を守る為、温暖化などの環境負荷(CO2 )をいかに抑制するかで各家庭部門の技術の開発を目指す為の講義で、省エネルギ-基準、建築環境総合性能評価システムの説明に続き、自立環境型住宅とは、気候や敷地特性、立地条件で住まい手に極力自然エネルギーを活用し、建物と設備機器の設計し、居住性や便利性を向上させ、二酸化炭素排出量を標準的な住宅と比較して50%のまで削減が十分可能で2010年まで実用化できる住宅の講義でした。


 住宅のエネルギー性能の設計手法のなかで、居住時のエネルギー消費の(環境家計簿)を入力する事で自宅の消費率が非常に分かり易く、身近に感じ、興味がわき又、自然エネルギー利用、断熱向上、設備環境計画、建物のプランニング配置、住まい手の健康スタイル、地域の気候風土に合った対策等の考え方を提案する事が大切と思いました。


 日本の食糧自給率は約40%で、自然エネルギー率が約4%以下と聞き大変ショックでした。
水力、火力、原子力、新エネルギー発電等が有りますが、一方では、原子力発電は環境に良いといいますが、大量の冷却水が必要と(信濃川の水量、日本第3位)伺っています。
地球温暖化の抑制に対し少しでも心がけ、子々孫々に言い伝えて対策、検討、実施する事が必要と思いました。


 終了後は、施設内の見学会を希望者のみで行い、先生より説明して頂ました。                                                                                                                      テクニカルゾーンを初め、森のコテージ、森の情報センター、卒業生さんの建物、在籍の学生さん建築中の建物の見学を約1時間程度、緑の小道なかを散策、学生さんへ建築施工の指導と業社さん共同と対応時期の苦労話しで、大変有意義な時間でした。
 

<受講生の感想>

●数値として客観的な性能評価を示すことは施主にとっても設計者にとってもメリットが多くので標準として設計にとりいれていきたいと思いました。

 

●エネルギー消費量の算定をはじめてやったけど、思ったより難しくなかったので、今度自分の設計した物件でも試してみたいです。

 

●環境家計簿も使いやすくおもしろそうなので試してみたいです。

 

●各項目がエネルギー数値及び家計簿によるコストに表されて、オーナーにも分かりやすく内容がおもしろかった。しかし、全体として建物の性能による割合より家電及び設備による割合の方が多く、どこまで建物ががんばらなければならないのか迷うところもあると感じた。

 

●自立循環型住宅の講習は2度ほど聞いたことがあるが、実際の計算として削減率を算出できたのは良かった。そして、より良い住宅(良い数値)にするには、どの個所を変えると良くなるかを知ることができた。

 

●トップランナー基準と環境家計簿のリンクはさすが辻先生でした。自立型も取り入れた手法はおみごと。

 

●家電シートもらってぜひやってみたい。今年みたいな猛暑は夏のエネルギーかわりますよね?期間も長くなりましたし。
 

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第3回講義を終えて

 講義の中で、柱が太くない建物でも、壁なしで出来ているのは新鮮な驚きでした。
アンカーボルトで固定されていないので、西岡棟梁も言われているように、壊れないのでしょうか。


 私の父も棟梁でした。父の建てた筋交いのない2階建てで育ったのですが、伊勢湾台風の時は、倒れるかと思いました。南側の雨戸が破られたら、北側の戸をたたき割って、逃げるように言われて、中から押さえていました。結果、傾きはしたものの、倒れませんでした。周りに何もない、風当たりの強いところでの農家の2階建てでした。


 やはり、大黒柱と太い差し鴨居と土壁の田舎普請はそれなりに強度があると実感していたのですが、内陸部は風荷重は低減されます。海岸端ではひとたまりもなかったと思います。
 でも、4寸ちょっとの柱で(ピッチは当然細かいですが)壊れない?資料のCDを読み進め、その理由を考えたいと思います。
 

<受講生の感想>

●壁・筋かいによる補強が、木造建築には必要と考えていましたが、古い工法の中に新たな技術が隠されているとわかりました。

 

●前回の大橋先生とは全く違った視点からの「木造」に関する話をきけてよかった。両方の話をもとに自分なりの考えを確立していきたい。

 

●知っておくべきことが膨大にあって途方に暮れそうですが、まずは下山先生の資料を読みたいと思います。とても楽しい講義でした。ありがとうございました。

 

●日本の建築の技を改めて学べて良かった。先生のおっしゃるように法的に矛盾を感じるところもあるが、少しでも取り込めるものを考え工夫しなければと思う。

 

●めずらしい話が聴けて大変おもしろかった。

 

●今日の講義は今までになく楽しく、おもしろく聞けました。下山先生の発想がおもしろい。

 

●ここ数年、新しい法律、新しい工法に目がいっていたが、古来からの日本の建築の良さを再認識できた。ゆったり流れてきた歴史の中でできた建築の、その偉大さを尊重することは大切である。

 

●架構から入る「礎石建柱」これらは木造の基本(基礎)として現在の多様な建築様式に振り廻されがちな考えを基本に戻すという上で重要な事だと思われます。

 

●疑問に思っても常識だと言われると納得するしかないと思っていたが、そうでもないこともあるのだと物の考え方が広がりそう。

 

●これからはSI(スケルトン・インフィル)にしないと駄目だと言われるが、昔は普通に存在していた。一時否定されていたものをうまく利用しているのにすぎないのでしょうか?

 

●これより先は立入禁止という札がなくなる時代が来ますように。

 

●昨年に続き今年も受講させて頂いていますが、大変勉強になりありがたく思っています。飛騨からの参加の為、3時間の講義に車の運転時間が4時間以上は大変残念です。1日の講習だとありがたいと思います。

 

●今までの建築をくつがえされる講義でした。聞くことすべてが新鮮でもっと聞きたいと思いました。自分が携わってきた木造工事をもっと深く知ることができました。

 

●カラ―資料にデータがありましたら配布していただきたいです。ヤフーかグーグル等のファイルの共有などが便利だと思います。
 

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第2回講義を終えて

講義の様子1

 今回の講義は、東京都市大学の大橋好光先生の講義でした。
 前半は、現代木造について、後半は伝統木造についての話でした。


 木質構造の特徴として、めり込み以外の強度(引張、せん断)の性質は、靭性に乏しい、接合部を剛接合にしにくい、荷重継続の影響が大きい、などがあるが、耐震性能として、中地震に対しては、無被害、大地震に対しては倒壊しない、という建物強度が求められている。

 

  また、最近の建物は、壁倍率が大きくなって、相対的に床の耐力が小さくなっていたり、上下階で壁の位置が違う、大きな吹き抜けがある、など構造的に不利な要素が増えている一方で、住まい手に要求される耐震性能が以前より高くなってきていることもあって、建物を強く、剛(かた)くする必要が出てきた。

 

 それによって、接合部を金物で補強したり、柱をHD金物で基礎に緊結する必要が出てきた。また、気象庁による地震の震度階が変更されたことで、同じ震度でも阪神大震災以前と以後では、加速度が倍近く違うこともある、という話が印象的でした。
 

 新聞にも掲載された「壊れない予定だった木造3階建住宅が倒壊した」振動台実験についても丁寧な説明を聞くことが出来ました。予想と違って倒壊したのは、入力した地震波が強かったためで、倒壊するはずの建物の方が柱脚の補強金物の破断によって、建物全体が、ズレながらも「基礎」を踏み外すことがなかったため倒壊を免れたことと比較されてしまい、思わぬ反響を招いてしまった、というのが真相ということです。目の前で起きたことから、何を読み取って、どのように考えるか、ということがとても重要なことだと改めて感じました。
 


 伝統木造工法について議論をする時に、基礎を「石場建て」として柱を基礎に緊結しない方が地震に強い、という考え方について話題に上ることがあります。その考え方は、「大きな地震力(水平力)が建物にかかった場合、建物がズレて『石場建て』が免震装置として働く」というものです。

 

 それに対して、大橋先生の話は、多くの具体的な問題点を挙げて反論され、「建物がズレることで『免震』するには剛(かた)い建物である必要がある」、「伝統木造を限界耐力計算で設計する場合は、柱脚を固定する必要がある」と話されました。

 

 この考えには、塾生の中にも賛同し難い方も居たようですが、実物大の建物を実際に起きた地震波で揺らして、データを取るという研究は、まだ始まったばかりで、今までわからなかったことが明らかになっていく途中にいます。伝統建築を学ぶ私たちは、感情や情緒の面からだけでなく、科学や物理の面からの視点にも関心をもって、いろいろな意見を聞いた上で、自分自身の意見を作り上げていく必要があると思いました。

 

<受講生の感想>
● パワーポイントのレジメがほしい。理論的で非常に分かりやすかった。もっといろんなお話が聞きたい。
●Eディフェンスの実験映像はとても興味をもてました。今回の実験結果等をもっと一般の人にも周知させて頂きたいと思います。
●Eディフェンスでの想定外の結果のニュースはとても衝撃的で、剛性を高くするだけでは逆に危険なのかと混乱していましたが、総括を聞けて納得がいきました。全体を通してとても興味深く、今後の為にもなるお話が聞けました。有難うございました。
●安易に伝統構法で地震に対して柔らかく備えようというのが実は危ないと科学的な話でよく分かりました。Eディフェンスの実験は改めてすごいなと感じた。
●公共建築木材利用促進法、非常に興味があります。
●実物大のものをそのまま実験出来る事は先生のおっしゃるように意味があり、想定と違った結果になったとしても、目に見えるインパクトは大で、映像が見れ面白かった。柱脚の設計で足元がすべる前提で言えば、前回講師の宮内さんの建物はかなり足廻りがしっかりした建物に思えたがEディフェンスに乗っかるとどんなデータが出るか?いつか実現することを期待します。
●昨年に続き本年も参加させて頂いておりますが、毎回大変内容の充実した有意義な講習で、有難く思っています。義務で受講する講習と異なり、皆さん全員、進んで勉強しようという熱意が伝わってきます。講師の先生方、暑い中大変でしょうが宜しくお願い致します。事務局の皆様方にも厚くお礼申し上げます。
●伝統的構法の設計に対する難しさを改めて知ることができた。
●伝統構法に携わる大工としては今日の話はいろいろと思うところもありましたが、これからの建築の事を思えば必要なのだろうと考えさせられる事ばかりでした。三階建ての倒壊の映像も知ってはいましたが、大橋先生の解説を聞いて非常に為になりました。
●木造3階建ての倒壊の実験を詳細に説明を受けて良かった。
●今回の講義で、振動台実験の映像を見せていただいたが、個人的な主観ではあるが、柱脚を固定しすぎる今の基準法からの施工では、結果的に倒壊をまねく恐れがあるのではないか?基礎面をフラットにして足元をフリー状にし、尚且つ地盤から離れない構法をとるべきではないか。
●実験結果から柱脚固定が柱破壊につながっているように見えたが、これを実施設計に生かし耐震性を向上させるのはまだまだ時間がかかるように思えた。
 

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第1回講義 「宮内建築の仕事」を終えて

休憩時間の様子

 宮内氏は、滋賀県草津市の出身で、幼少期より、父と叔父の元で、厳しい下積み時代を過ごされた大工さん(曾祖父から数えて4代目)です。


 ハウスメーカーの下請けの仕事をされていた時、施主の奥様が「ここを変えて欲しいのに、どうして言えないのでしょうか?自分の家なのに…」と泣かれる様子を見て、自分自身を見つめ直し、現在は、地元の木を使って、地域の気候風土に合った、「四寸角挟み梁工法」と、「水中乾燥材」を使った、家づくりに日々精進し取り組んでいらっしゃいます。


 「四寸角挟み梁工法」の誕生は、E-ディフェンス震動実験台で行われた、伝統的構法建築の実験で柱と梁の接合部分が破断し、倒壊する様子がきっかけになりました。「家が倒壊すれば、そこに住んでいる人の生命に危険がおよぶ。梁より柱が先に破壊すれば生命は、より危険になる。」との考えから、地震がきても倒壊し難い工法として、また、間伐材(小径木)を使用することが出来るため、山が荒れることの歯止めにつながる、という考えから生み出された工法でもあります。


 当日は、実物の建築模型を2物件持参して頂き、柱、梁、込み栓の納まり方法が、非常に明解で、休憩時間中も塾生からの質問も多く大変、盛況でした。


 木材の乾燥には、天然乾燥、機械乾燥、薫煙乾燥、水中乾燥、高周波等の乾燥方法がありますが、この「挟み梁工法」は、「割れにくい木材」を使用する必要があるため、乾燥方法が特に重要になります。昔、山から木を伐り出す手段がなかった頃は、伐った木は筏にして川に流していました。そうすることで木材内部の水分が抜けやすくなり、全体がバランスよく乾くという利点がありました。宮内さんは、その先人の知恵を生かした、「水中乾燥」をご自身で実践されています。木材の割れ、ねじれ等が少なく、また背割りも必要なく、挟み梁の構造材として最適な乾燥材です。また、木材の害虫駆除、アク抜きの利点もあり、滋賀県の環境(森林と水)と風土にも合っています。


 また、お施主様に、木材の伐採現場、水中乾燥の状況を直接見学して頂き、家を建てるには時間がかかる事を説明し、家族全員で子供、孫、と長く大切に受け継がれる家づくりを願っていらっしゃいます。
「四寸角挟み梁工法」は、県産材の間伐材を有効利用、琵琶湖の水の活用、たくさんの共同研究者や教育機関と一緒に編み出された、環境と風土に融合した工法であると思いました。

 

 先般、6月12日~14日に岐阜県は、天皇皇后両陛下をお招きし(全国豊かな海づくり大会)植林、魚の放流が、各地域で盛大に行われた事もあり、山、村、川、町、海の環境を守る為にもできるだけ、循環型で環境に配慮した、自然な暮らしの家づくりの建築工法を後世に伝えなければならいと考える講義でした。

 

<受講生の感想>

●木に携わる者として改めて考えさせられました。今までやってきた工法、考えが当たり前ではなく、常に疑問を持つことが大切だと感じました。もう一度勉強しなおそうという考えになりました。 

●伝統工法で建てるということを考えると、材を太くしたり大きくしたりするという考えしか出てこないが、材を細くする考えを思いつくのはすごいことだと思った。長期住宅をうたうなら、建てる前も長期時間をかけることが理にかなっていると考えさせられる。

●主流である4寸角で構成されていることが納得させられる。これからの森林(山)の状況を考えると小径木で建てられる工法にショックというか、感動というか、(物)建物を造る工夫を常に考えられている姿に刺激を受けました。有難うございました。水中乾燥も木材の質、割れ等のメリットばかりに思われ(手間はかかりそう)今後の参考にできればと思います。

 

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