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2010年度

HOME2010年度第2回講義を終えて

第2回講義を終えて

講義の様子1

 今回の講義は、東京都市大学の大橋好光先生の講義でした。
 前半は、現代木造について、後半は伝統木造についての話でした。


 木質構造の特徴として、めり込み以外の強度(引張、せん断)の性質は、靭性に乏しい、接合部を剛接合にしにくい、荷重継続の影響が大きい、などがあるが、耐震性能として、中地震に対しては、無被害、大地震に対しては倒壊しない、という建物強度が求められている。

 

  また、最近の建物は、壁倍率が大きくなって、相対的に床の耐力が小さくなっていたり、上下階で壁の位置が違う、大きな吹き抜けがある、など構造的に不利な要素が増えている一方で、住まい手に要求される耐震性能が以前より高くなってきていることもあって、建物を強く、剛(かた)くする必要が出てきた。

 

 それによって、接合部を金物で補強したり、柱をHD金物で基礎に緊結する必要が出てきた。また、気象庁による地震の震度階が変更されたことで、同じ震度でも阪神大震災以前と以後では、加速度が倍近く違うこともある、という話が印象的でした。
 

 新聞にも掲載された「壊れない予定だった木造3階建住宅が倒壊した」振動台実験についても丁寧な説明を聞くことが出来ました。予想と違って倒壊したのは、入力した地震波が強かったためで、倒壊するはずの建物の方が柱脚の補強金物の破断によって、建物全体が、ズレながらも「基礎」を踏み外すことがなかったため倒壊を免れたことと比較されてしまい、思わぬ反響を招いてしまった、というのが真相ということです。目の前で起きたことから、何を読み取って、どのように考えるか、ということがとても重要なことだと改めて感じました。
 


 伝統木造工法について議論をする時に、基礎を「石場建て」として柱を基礎に緊結しない方が地震に強い、という考え方について話題に上ることがあります。その考え方は、「大きな地震力(水平力)が建物にかかった場合、建物がズレて『石場建て』が免震装置として働く」というものです。

 

 それに対して、大橋先生の話は、多くの具体的な問題点を挙げて反論され、「建物がズレることで『免震』するには剛(かた)い建物である必要がある」、「伝統木造を限界耐力計算で設計する場合は、柱脚を固定する必要がある」と話されました。

 

 この考えには、塾生の中にも賛同し難い方も居たようですが、実物大の建物を実際に起きた地震波で揺らして、データを取るという研究は、まだ始まったばかりで、今までわからなかったことが明らかになっていく途中にいます。伝統建築を学ぶ私たちは、感情や情緒の面からだけでなく、科学や物理の面からの視点にも関心をもって、いろいろな意見を聞いた上で、自分自身の意見を作り上げていく必要があると思いました。

 

<受講生の感想>
● パワーポイントのレジメがほしい。理論的で非常に分かりやすかった。もっといろんなお話が聞きたい。
●Eディフェンスの実験映像はとても興味をもてました。今回の実験結果等をもっと一般の人にも周知させて頂きたいと思います。
●Eディフェンスでの想定外の結果のニュースはとても衝撃的で、剛性を高くするだけでは逆に危険なのかと混乱していましたが、総括を聞けて納得がいきました。全体を通してとても興味深く、今後の為にもなるお話が聞けました。有難うございました。
●安易に伝統構法で地震に対して柔らかく備えようというのが実は危ないと科学的な話でよく分かりました。Eディフェンスの実験は改めてすごいなと感じた。
●公共建築木材利用促進法、非常に興味があります。
●実物大のものをそのまま実験出来る事は先生のおっしゃるように意味があり、想定と違った結果になったとしても、目に見えるインパクトは大で、映像が見れ面白かった。柱脚の設計で足元がすべる前提で言えば、前回講師の宮内さんの建物はかなり足廻りがしっかりした建物に思えたがEディフェンスに乗っかるとどんなデータが出るか?いつか実現することを期待します。
●昨年に続き本年も参加させて頂いておりますが、毎回大変内容の充実した有意義な講習で、有難く思っています。義務で受講する講習と異なり、皆さん全員、進んで勉強しようという熱意が伝わってきます。講師の先生方、暑い中大変でしょうが宜しくお願い致します。事務局の皆様方にも厚くお礼申し上げます。
●伝統的構法の設計に対する難しさを改めて知ることができた。
●伝統構法に携わる大工としては今日の話はいろいろと思うところもありましたが、これからの建築の事を思えば必要なのだろうと考えさせられる事ばかりでした。三階建ての倒壊の映像も知ってはいましたが、大橋先生の解説を聞いて非常に為になりました。
●木造3階建ての倒壊の実験を詳細に説明を受けて良かった。
●今回の講義で、振動台実験の映像を見せていただいたが、個人的な主観ではあるが、柱脚を固定しすぎる今の基準法からの施工では、結果的に倒壊をまねく恐れがあるのではないか?基礎面をフラットにして足元をフリー状にし、尚且つ地盤から離れない構法をとるべきではないか。
●実験結果から柱脚固定が柱破壊につながっているように見えたが、これを実施設計に生かし耐震性を向上させるのはまだまだ時間がかかるように思えた。
 

講義の様子2

講義の様子3

 
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